北口 義一

  • 石川県庁
  • 観光戦略推進部国際観光課(課参事)
  • 北口 義一
  • 1991年 外国語学部 英米語学科 卒業
北口 義一

英米語学科なのに1・2回生の時には中国語を熱心に勉強

 学生時代は英米語学科でしたが、英語を一生懸命に勉強したという記憶は特になく、3回生の時に留学に行ってから、ようやく日常会話ができるようになったという感じでした。1・2回生の時にはテキストを丸暗記するなど、むしろ中国語を熱心に勉強していた記憶があります。私の場合、もともと勉強嫌いだったのですが、外国への興味から何とか英語だけは続け、大学で初めて学ぶ中国語も熱心に勉強していたので、それが今携わっているインバウンドの仕事にも生かされていると感じます。

留学先で少林寺拳法と合気道のコラボ演武を披露

 在学中は少林寺拳法部に所属し、二段を取得。おかげで、今でも「少林寺拳法二段、お腹は三段、合わせて五段」とおやじギャグに使わせてもらっています。当時のエピソードとしては、1回生か2回生の時に、体育会系特有のノリで毎年恒例になっている学園祭のミスター外大コンテストに出場させられたことが記憶に残っています。大勢の観衆の前で恥ずかしかったですが、確か「カールおじさん」や「水前寺清子の365歩のマーチ」、「パーマン2号(サル)」などを披露したと思うのですが、見事準優勝して1万円の旅行券を勝ち取りました。このような経験のおかげで少しずつ顔の皮も厚くなってきたんでしょうか、今では滅多に緊張することもなくなりました。

 また、在学中は推薦留学でアイオワ州のUniversity of Northern Iowa(ノーザン・アイオワ大学)に留学もしましたが、私が留学した大学でも、さまざまな国から留学生が来ていました。ある日、留学生が自国の文化や芸能などを紹介する、地元の学生との交流を目的としたイベントがありました。私は大学に入ってから少林寺拳法を始めたのですが、一人で型を披露してもあまり面白くないと思っていましたので、ちょうど合気道を習っていた日本人を見つけ、少林寺拳法と合気道のコラボで演武を披露することにしました。当時、アメリカの中西部では、日本の武道はまだ珍しかったようで、大変な大歓声をもらったのを覚えています。海外にいると、日本の慣習や文化などについて聞かれたり、紹介したりする機会が多く、そんな時、もっと自分達の文化について理解しておくべきだったと思い知らされます。

国際協力の仕事に就きたいという思いを胸に大学院留学のため渡米

 卒業後は、民間企業で6年余り営業を経験しましたが、国際協力の仕事に就きたいという思いを胸に、1997年8月に大学院留学のため渡米。ロサンゼルスにある南カリフォルニア大学大学院で行政学の修士課程(MPA)を修了しました。大学院修了までの期間に国連ニューヨーク本部でインターンを経験したのですが、国連に派遣されていた日本の地方自治体の人から、石川県庁が国際協力に積極的に取り組んでいるという話を聞き、両親の故郷でもあったことから石川県庁を受験することに決めました。そして、職務経験者採用試験に無事合格し、2000年4月より石川県庁に入庁。国際課に配属となり、国際会議の開催や留学生の受け入れ、国際協力事業等を担当しました。

青天の霹靂

 そんな私に転機が訪れたのは2006年。国が推進するビジット・ジャパン・キャンペーンに連動する形で県庁内に海外誘客(インバウンド)を推進する国際観光グループが新しく設立され、そのグループに配属が決まったのです。旅行業界の経歴を持たない私が、青天の霹靂で突如としてインバウンドに関わることになり、台湾市場を担当することとなりました。

 台湾の人たちは中国語を話すことから、大学時代に第二外国語で中国語を専攻していた私は20年ぶりに中国語を勉強し始め、朝の通勤でNHKラジオを聞くようになりました。学生時代多少なりとも熱を入れていたため、20年経っても中国語の読み方(ピンイン)を覚えていて自分で学習できたのが幸いでした。インバウンドの仕事で語学は絶対必要条件ではないとはいえ、少しでも相手の言葉を話すことができれば距離が縮まり、信頼関係の構築にも役立ちます。ただ、発音がそこそこ正確にできると、相手は私が中国語ペラペラだと思い込み、機関銃のように話しかけてきます。そこは困りましたね。

 台湾からはじまり、香港、オーストラリア、中国市場などの担当を経て、現在は、欧米、東南アジアを含むインバウンド施策全体を統括しています。早いもので、インバウンド歴はかれこれ10年になります。
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台湾旅行会社との打合せ
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観光セミナーでのプレゼン

ますます高まる日本への注目度

 インバウンド市場の拡大は、国の成長戦略の柱の一つとして挙がっており、国では、訪日客の早期2,000万人達成を目標としています。一方、石川県でも、外国人宿泊者数の早期50万人達成を目標に掲げており、昨年の29万4千人をさらに拡大していくためにさまざまな取り組みを進めていいます。

 外国人旅行者は、広域的に日本の魅力ある観光地を巡る傾向にありますので、石川県のみならず、隣県を含む広域での取り組みが不可欠となり、積極的に他の自治体や交通事業者への連携を働きかけています。とりわけ、今年は北陸新幹線が開業して東京・金沢間のアクセスが2時間半に短縮され、さらに、東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まったことで、ますます日本への注目度が高まってきています。そのため、今後はさらに多くの外国人を日本に誘客する好機となるのは間違いありません。これまでは、初めて日本を訪れる外国人は東海道新幹線を利用し、東京、京都、大阪を旅行するゴールデンルートが主流でしたが、今後はこれに代わるいろいろなルートが出てくることでしょう。例えば、北陸新幹線を利用し、海山の自然の景色や昔ながらの日本の街並みや文化など、都市部では見られない沿線の観光の魅力を満喫してもらおうと、石川県が旗振り役となって、長野、新潟、富山、岐阜、福井など沿線の自治体やJRに協力を呼び掛け、共同でPR活動を展開中です。
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インセンティブツアーのお出迎え
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インドネシア人留学生との観光に関する意見交換会

言葉のスキルよりも、コミュニケーション力を磨くこと

 外国語を学び、海外の人たちと接する機会の多い後輩の人たちにとって、これから社会に出て活躍するチャンスはたくさんあります。外国語を学ぶ人たちは、言葉のスキルもさることながら、海外の人たちと接するうちに、物おじせず、自分の意見を明確に言えるようになるものです。そこからコミュニケーション力が磨かれ、ネットワークづくりもスムーズにできるようになります。言い換えれば積極性ですね。知らず知らずのうちにそんな能力が備わってくるのではないでしょうか。それは社会に出ても同じです。私は、言葉を話せるということよりも、むしろ、それに付随して備わるこうした能力が、今後、社会に出て大いに役立つことだと思っています。

掲載:2015年9月