髙取 朋子

  • 大阪・神戸米国総領事館
  • 査証課
  • 髙取 朋子
髙取 朋子

英語を好きになった理由、それは英語の持つ「音」の魅力。

 もともと英語は好きでした。特に英語の持つ「音」に惹かれて、耳から入った音をそのまま口から出すことから始めたのを覚えています。実際、中学英語は文法を覚えることから始めると思いますが、私自身、文法にしばられることなく、音から入ったのが良かったんだと思います。中学時代には、暗唱大会に出て3位に入賞したこともあり、ますます英語が好きになっていました。そのおかげで、大学に入る頃には英語が話せるようになっていましたし、外国人の友だちも既にいましたね。

 関西外大に入ってからは、できるだけネイティブの英語の「音」を聴く為に留学生とのコミュニケーションをとる機会を持つようにしました。当時、国際交流センターは少し離れたところにありましたから、話をする機会がなかなかありませんでした。そこで、留学生と知り合いの友人に紹介してもらったり、留学生を見つけたら声をかけたりと、とにかく積極的に自分からコミュニケーションを取るようにしました。もともと、自分から話しかけたりするのを恥ずかしいと思わないタイプでしたから、ネイティブな先生のところにも、進んで話かけに行ってましたね。実際、在学中に先生からもらった連絡先を頼りに、アメリカで仕事をする様になってから先生に連絡を入れた事もありました。先生も私のことを覚えていてくれて、それから何度か手紙のやりとりをしたこともありました。

今の自分がここにあるのは、あの日、人生の転機にチャンスを与えてもらったから。

 卒業後、私はすぐには会社には就職せず、1年間オーストラリアに行きました。帰国後は、それまでの経験を活かし、色々な人に英語を教える職に就きました。例えば新幹線のコンダクターの方が翌日からそのまま使えるような実践的な英語を中心に、3年くらいJRの方々に英語を教えました。皆さんとても熱心に取り組んでいただいて、本当に楽しい時間を過ごさせていただいたのを覚えています。

 それから、ハワイのマウイ島で自分の会社を興すことになりました。その頃の私はまだ20代。投資家ビザを取得しようとこの大阪の領事館に来たんですけど、あなたのような若い女性が投資家な訳がない、と一度は断られたんです。今でも思い出しますが、その時は自分に何が起こったのかわからずに、愕然としてその場で佇んでしまいました。でも、その後、色々な方の協力のおかげもあり、ビザの許可がおりることになりました。当時の担当領事が、私に「グッドラック」という言葉をかけてパスポートを手渡してくれ、握手をしてくださいました。この時、私にチャンスを与えてくれたおかげで、私はアメリカで生活をし、様々な貴重な体験をすることができたんです。私の人生の転機ともいえるこの時に、もしその時の領事がチャンスを与えてくれなかったら、今日の私はいなかったと思います。あの日から、私の新しい人生が始まりましたね。

あの日、チャンスをもらったこの場所で、今は新しい目標に向かって進んでいます。

 アメリカで8年ほど色々な経験をして、それから帰国をしました。帰国後はじっとしていることが耐えられず、すぐに新しい仕事を求めて面接を受け、2年間は外資系ホテルのインターナショナルアカウントの仕事に就きました。それから縁あって、今のこの職場に入ることになりました。あの日、私の人生の転機にチャンスをもらったこの場所で、今働いているなんて、なんだか運命を感じますね。

 今、私はビザ課に所属し、ビザアシスタントとビザアウトリーチコーディネーターという仕事をしています。アメリカに長期間行って何かをしようとすれば、必ずそれにふさわしい資格のビザが必要になります。そのためにここに来られる方の面接の受付や審査などを行うのがビザアシスタントです。それから、実はこちらも非常に大切な役目になるのですが、ビザアウトリーチコーディネーターは、簡単に言うとアメリカへの留学やビジネスをプロモーションする仕事になります。
 今、日本人が海外留学をする数は、昔に比べると減ってきています。アメリカに限って言えば、日本は昔、トップ3位に入る国だったんですが、2010年時点では6位に下がっています。そんな中、私たちはアメリカへの留学を推進しています。時には大学や企業でセミナーを開いたり、時には高校生を領事館にツアーとして招待し、領事による説明会や模擬面接をおこなったりします。特にツアーに参加された高校生の方は、来られたときの顔と比べて、より一層輝いた顔をして帰られるのが印象的です。英語を使ってコミュニケーションが生まれたということを体感できて、非常に輝いた目になられるんですね。ああ、いつかアメリカに行ってみたいな、アメリカに行って勉強してみたいな、という気持ちになっていただくことが、今の私の大切な役割です。
 でも、そんな時でも、自分自身が海外で色々な体験をしていないと、相手には伝わりません。本当に色々な体験や経験をさせてもらったことには感謝しないといけません。若い人たちにも、これからにどんどん海外に出て、色々なことを体験しそしてどんどん体で吸収してきて欲しいと思いますね。
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留学に行く機会があったら、留学前後の写真を撮って見比べてみてください。

 アメリカのいい所は、やっぱりアメリカンドリームっていう言葉があるように、色々なチャンスを与えてくれるところです。自分自身の目指す道を、いい方向に変えてくれる国だと思いますね。実際に経験しないと分からないと思いますが、私は経験上、たくさんの人を面接して海外に送り出しています。留学する人に対しても、説明会で話をするときにも言うんですが、どうか皆さん留学に行く前の自分の顔と、留学に行った後の顔の写真を撮っておいて欲しい。それは、留学に行く前と行った後との顔つきが、全く違っているからなんです。本当の意味で自分に自信ができて、すごく皆さんいい顔になって帰ってくるんです。若いうちに、色々な経験をするというのは、本当に大事なんだと思う瞬間ですね。もちろん英語を勉強しに行くわけなんですけど、英語を勉強しに行くだけでは絶対にないですから。勉強することにあたっては生活をする、生活をするっていうことは、色々な人や出来事に出会って、色々なことを自分でやりこなしていく訳ですから。それが経験になって、その人の顔を作り、そして考え方を作り、その「人」の色々なものを創り上げていくことに繋がると思いますね。

 仕事の面では、これからも1人でも数多くの若い方々に留学をしていただくために、もっともっとアグレッシブに、親切に、アウトリーチをしていきたいと思います。海外に行こうかどうか迷っている人に、ポンって背中を押してあげられるようなサポート役になれればいいですね。後は、今までに出会った人との絆を、改めて大切にしていきたいと思っています。学生時代に楽しい時間を一緒に過ごした仲間たちと、もう一度会って絆を確かめる機会をぜひ持ちたいですね。

掲載:2011年4月