長谷川久美子

  • ハワイ・ネイチャー・エクスプローラーズ
  • ネイチャー・インタープリター
  • 長谷川久美子
  • 1985年 関西外大ハワイカレッジ 卒業
長谷川久美子

卒業後のライフフィールドとなるハワイでの学生生活

 ハワイカレッジで約2年間の学生生活を送りました。学ぶ期間がかなり限られていたこともあり、その短い期間を有効的に使うようにし、可能な限り英語力を身に付けることができるように頑張りました。親元を離れての学生生活でしたので、自立心が高まったことも大きな成果だったと思います。

 卒業後、一時帰国して英会話教室で講師を勤めましたが、ほどなくしてハワイに戻りました。その後、しばらくしてからアメリカ本土のニューハンプシャー州に移り、ハートフォード保険会社にファイル・クラークとして勤務しましたが、長女の出産を機に職場を離れ、再びハワイ島へと引っ越しすることになりました。卒業から3年間、あっという間の目まぐるしい毎日でした。
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エコツーリズムとの出合い

 ハワイ島に戻ってからは、ツアー会社に入社して経理事務のアシスタントとなりました。しかし、時を同じくして湾岸戦争が起こり、勤務時間がカットされることになったため、車の販売をする会社のオフィスで経理事務のアシスタントの仕事を得て、しばらく2つの仕事を掛け持ちしました。また、その後は、ハワイ州の小規模なビジネスを行う会社を対象として、健康保険の仲買をする会社のオペレーション・マネージャーを約7年間勤めました。このころは、今と違い事務系の仕事が多かったのですが、どんな仕事でも、求められている以上の仕事をしました。それらは全て、今後自分がやりたいことに繋がると信じていたからです。

 そして、1998年にユースホステル的な宿泊施設とバックパッカー向けのツアーを提供するツアー会社に入り、日本人向けのツアー(企画・営業・ガイド)を立ち上げました。ちょうどこのころ、カナダのエコツーリズムの資料を読んだことをきっかけに、初めて持続可能性やエコツーリズムのことを知ることになります。

 ハワイで学生生活を過ごしたときには、ハワイの自然史について興味がなかったことに加え、それについて話してくれる人がいなかったことも相重なって、まったく知らないままで学生生活を終えました。でも、今は、ハワイを訪れる人たちに一人でも多く、ハワイ固有の植物や鳥などについて伝えることの大切さを感じています。知ることによってハワイへの思いが大きく変わるだけでなく、帰国後、旅行前とはまた違った目線で、身近な自然環境について目を向けてくれるようになるからです。

天職といえる仕事ネイチャー・インタープリター

 2001年に9.11テロ事件が起き、それを機に2002年に独立を決意しました。独立したてのころは、まだ、テロ事件直後であったため仕事が少なく、複数のパートタイムの仕事と掛け持ちを行う状況でした。他のツアー会社のガイドを行ったり、ハワイ大学ヒロ校が主催する教育要素を持ったツアーの案内や、すばる望遠鏡の山頂施設の公認ガイド・・・などです。しかし、経験を積み重ね、エコツアーを追及していくにつれて、自身のツアービジネスが徐々に軌道に乗り始めるようになっていきました。

 自然と一体になることが好きで、型にはまることや、娯楽以外での競争が苦手な私にとって、自ら生み出したスタイルのエコツアーは、自身が自然体でいられる個性に基づいた仕事です。職業名はネイチャー・インタープリター、自然と人を結びつける仕事です。

 常に学びの精神を忘れず、日々レベルアップに努めていますが、個人的な面でも、仕事の面でも、個性的な進化の過程にあります。専門的な内容の書物や講義は英語なので、学生時代に身に着けた英語の基礎力が、大いに役立ちました。
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Go with the flow.

 これから今の仕事がどう展開していくのか、これはなるがままにです。Go with the flow.  これが私の歩み方のようです。1989年にハワイ島で住むようになったころから、いつか自分でクリエイティブな仕事(独立しての仕事)をしたいと思っていました。それが何なのかはわかりませんでしたが、川のように流れる人生の流れに乗ってみると、今の仕事に流れ着きました。今置かれている立場で誠意をもって人一倍努力していると、道が開けると信じています。

 夢を頭に描き、向上心と意欲を高くもって、努力を惜しまないこと。そして、その努力は、欲や結果のための利己的なものではなく、利他的な心構えでの習慣的な努力であること。欲しているものや良い結果は、適切な時に適切なものが与えられるものだから。

自分の個性を生かしたことをする

 雇われる身であっても、Go an extra mile. 仕事だけに限らず、自分の個性を生かしたことをする。個性は誰にも真似ることはできない。それは好きなことに没頭することと同じ。そうすることによって、自分をより輝かせることができる。

 熱く輝いていると、やがて求めているものが自然と表れてきます。そして、気が付くと自分のニッチが見つかっていたり、輝く自分の姿を確認することができるはずです。
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Leave this world a little better than you found it.

 2020年、新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)によって、人生に新たな転機が訪れました。

 ハワイでは、約200年の間に森林がすっかり伐採され、島中にいた鳥や植物たちはその住処を追われ、島の一部に残るだけになってしまいました。

"Leave this world a little better than you found it.(この世の中をあなたが生まれてきたときよりも少しで良いものにして残すように努めよ。)"
"If you are not part of the solution, you must be part of the problem.(もし、あなたが解決の一部でなければ、あなたは問題の一部である。)"


 これらの言葉を胸に、コロナ前にはツアーの仕事でなかなか参加できていなかったボランティア活動にも積極的に参加するようになりました。そんな中、自分たちの身近な環境で何かできることがないかを改めて見つめ直し、水鳥のために湿地の再生・保全活動を行う非営利団体(ʻĀina Hoʻōla Initiative)を立ち上げました。思い立ったらすぐに行動となっていましたが、当然、ぼろぼろになってしまった自然環境をすぐに取り戻すことはできません。

 もともと、ハワイにはどこの島にもロコ・イアと呼ばれる自然を生かした養殖池(フィッシュポンド)がたくさんあり、長らく人々の生活と共生してきました。しかし、その伝統的な生活様式や文化が失われ、活用されなくなったフィッシュポンドや周辺の水辺は、いつしか繁殖力の強い外来植物に一面を覆い尽くされるようになり、固有種の生息を妨げる原因になっていました。このような外来植物の駆除をはじめ、身近なところから地道な再生活動を続けることで、少しずつではありますが着実にその成果が芽生えはじめています。いつしか、水鳥たちが安全に過ごせるような、自然と水と人が共存していた、かつてのハワイの姿を取り戻したいと考えています。

掲載:2018年12月(2023年10月更新)
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ハワイ・ネイチャー・エクスプローラーズ

自然観察を主な目的としたツアーの案内をさせていただいております。ハワイ在来植物(在来種の内、約90%は固有種)の観察、野鳥の観察(主に固有種)、それらの植物や鳥たちが生息する環境(火山における様々な環境、森林、高山など)の観察を通して、五感を存分に使って自然に親しみ、自然と人との関わりについて認識を深めます。決して堅苦しいツアーではありません。
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ʻĀina Hoʻōla Initiative
地元のコミュニティーだけでなく、旅行者でもボランティア活動に参加することができますので、興味のある方はぜひご覧ください。

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